研究概要 |
上皮は単なる機械的バリアを維持するにとどまらず、樹状細胞とのクロストークがナイーブT細胞に作用してTh2応答誘導を引き起こすことが次々と明らかになっている。この機能は、獲得免疫の中で粘膜上皮細胞の免疫機能が、従来の概念よりさらに重要な機能を持っていることを意味する。今年度は、新たに上皮細胞と樹状細胞との相互作用について検討した。まず,アレルギー性鼻炎にて鼻粘膜上皮で発現亢進を認めたサイトカイン(TSLP)の機能をさらに解析するため,樹状細胞とタイト結合への役割を解析した。マウスの樹状細胞株を用いたが,Claudin7が樹状細胞に発現し、TSLPがこのタイト結合タンパクの発現調節を担っているかどうかを確認した。さらに,シグナル伝達についてPKCシグナルがタイト結合調節に重要であることを確認したため,アレルギー性鼻炎に関与する他の因子としてPPARγとタイト結合についても今年度は解析した。鼻粘膜上皮機能と樹状細胞の関係を探ることは、感染防御機構などの広い範囲の炎症調節機構の解明につながると考えている。 さらに,上皮に発現しているToll様受容体の刺激によるサイトカイン産生,タイト結合タンパクの発現を検討した。炎症に関与しているIL-8の産生はTLR3刺激でのみ産生が亢進した。このことは,ウイルスの感染との関連が示唆されたため,次年度の研究課題につなげることとした。
|