研究概要 |
Stevens-Johnson症候群(SJS)、その重症型である中毒性表皮壊死融解症(TEN)は、誘因となる薬剤投与の前に感冒様症状などウイルス感染症を思わせる前駆症状を呈することが多い。また慢性期においては眼表面に感染症を生じやすい。このような事実からSJS/TENの発症や病態には、自然免疫異常が関与する可能性がある。我々は、遺伝子発現解析ならびに候補遺伝子アプローチによる遺伝子多型(SNP)解析により、SJS/TENに自然免疫応答の異常が関与することを示した。SJS/TEN患者の末梢血単球を用いた遺伝子発現解析において、健常人では、LPS刺激によりIL4Rの発現が上昇するのとは対照的に、SJS/TEN患者では、IL4Rの発現が減少することを発見した。IL4Rの遺伝子多型解析を行ったところ、Gln551Argにおいて有意な差を認めた(A vs G, raw p value=0.00043,odds ratio=3.95,A/A vs A/G+G/G, raw p value=0.00059,odds ratio=4.1)。これらの結果より、IL4Rが自然免疫応答に関係し、その反応性の違いが、SJS/TENの発症に関与している可能性が示唆された。さらに、ウイルス由来二本鎖RNAを認識するTLR3に着目して、遺伝子多型解析を行った。JSNPsに登録されているTLR3の7つのSNPsを解析したところ、rs.3775296について、有意な差を認めた(T/G+G/G vs T/T, raw p-value=0.00004,OR=0.18)。TLR3は、眼表面上皮に強く発現していることも確認できており、ウイスル感染に対する反応性の違いが、SJS/TENの発症に関与している可能性が示唆された。SJS/TENの発症には遺伝的素因が関与し、とくに自然免疫応答の異常が発症に関与している可能性がある。
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