研究概要 |
グルタミン酸トランスポーター欠損マウス(GLAST,EAAC1,GLT-1)の各strainを8ヶ月程度飼育し、定期的に眼圧測定を行った。また各々の硝子体サンプルを採取し、グルタミン酸濃度を測定した。さらに逆行性ラベリングおよび綱膜神経節細胞層の細胞数カウントなどにより、網膜神経節細胞数の推移を定量化した。並行して定期的にこれらマウスの多局所網膜電位の計測を行い、視機能判定のパラメーターの1つとして利用できるかどうか検討を進めた。次に各々のマウス網膜抽出液を用いたELISA法により、抗酸化物質であるグルタチオン、酸化ストレスの指標として脂質ヒドロペルオキシド等の濃度測定を行った。網膜ではグルタチオンの多くがMuller細胞に取り込まれたグルタミン酸を材料として合成されることから、網膜全体のサンプルに加えて培養Muller細胞についても同様の検討を行った。また各遺伝子改変マウス網膜から作製した培養網膜神経節細胞に過酸化水素を負荷し、細胞死の状況をTUNEL色およびLDH assayなどで定量化した。同様の実験を培養Muller細胞との混合培養において行い、網膜神経節細胞の酸化ストレス耐性を確認した。以上の結果を学術論文の原著としてまとめ、国際的に評価の高い臨床医学研究雑誌であるJournal of Clinical Investigationに掲載された。本研究は、世界初の正常眼圧緑内障モデル動物の確立という大きなインパクトのある成果をもたらすとともに、今後の神経変性疾患の治療研究に期待がもたれる結果となった。
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