本研究成果として、ASCのキャラクタリゼーションを行い、接着培養すると新鮮時には発現がなかったCD105(endoglin;間葉系幹細胞のマーカーの1つ)が発現すること、皮膚線維芽細胞をはじめ、骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)、臍帯由来幹細胞など間葉系の組織前駆細胞と形態的には類似しているが、機能、表面抗原発現における相違点を明らかにした。また、培養を続けると減少するCD34の発現を長期的に維持する培養法を開発した。さらに脂肪再生に関する研究を行い、ヒト吸引脂肪が幹細胞欠乏組織であることを明らかとし、幹細胞を補助的に用いる新しい脂肪移植法の概念を提唱した。免疫不全動物を用いて、ヒト脂肪組織および脂肪組織由来幹細胞を用いて脂肪再生への有効性を示した。また、GFPラットを用いて、幹細胞の追跡実験を行い、血管内皮細胞への分化を確認した。また、ヒト脂肪とヒト脂肪由来幹細胞の混合移植モデル(ヌードマウス)を用いて、やはり血管内皮細胞への分化を確認した。また、遠心処理により脂肪組織から水分が失われ、一部の脂肪細胞は破壊されるが幹細胞は生存することを明らかにし、また脂肪移植における遠心処理の最適化、脂肪組織および幹細胞の非凍結保存の最適化、長期凍結保存した脂肪由来幹細胞の機能解析結果を報告した。さらに、脂肪由来幹細胞にbFGFが作用するとHGFを強力にHGFを分泌することを明らかにし、この作用はJNKシグナルを介し、脂肪組織の虚血再還流傷害後の脂肪再生、血管新生において、脂肪幹細胞由来のHGFが線維化を抑制する働きがあることを明らかにした。また、血管新生、脂肪再生において脂肪幹細胞が主役的な役割を果たして増殖、遊走することを明らかにした。
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