研究概要 |
Lipopolysaccharide(LPS)により発現誘導された「Protease-activated receptors(PARs)がPARs自身による凝固・炎症反応増強機序に加えて、VEGFの発現誘導あるいはVEGF発現抑制からさらなる炎症反応増強とアポトーシスにより敗血症性臓器不全発症に深く関わっている」、という仮説を証明することを目的として研究を遂行した。 本年度は、脳、肝臓、肺臓、腎臓を標的臓器とした研究を行い、LPSによりPAR1,2,3,4蛋白がこれらの4臓器に発現することを確認し、さらにRT-PCRを使用してmRNA発現が同時に見られることからこれらPARsの発現が転写段階で調節を受けてLPSによる発現誘導が起こることが確認された。また、同時に炎症性サイトカイン(TNF-alpha)に加えてTissue factor,thrombin,FVII,FX,fibrin,t-PA,PAI-,D-dimer等の凝固線溶系諸因子の同時発現を確認し、PARsを介した炎症凝固反応連関の存在が証明された。これらの連関が標的とした4臓器の機能不全を惹起していたが、PAR2 blocking peptideの使用がそれら機能不全を改善することも確認された。 以上の実験結果を受けて、まず肺臓でLPSによりVEGFが発現するか否か、VEGF発現が敗血症性臓器不全(肺臓では、Acute Lung Injury-ALI and Acute Respiratory Distress Syndrome-ARDS)に関与するか否かを検討した。LPS静注によりラット肺臓に経時的にVEGF蛋白発現が誘導され、これらの発現にはアポトーシス関連蛋白であるcaspase 3,Bax,Bcl2,pAktの変化を同時に伴うことが確認された。VEGF情報伝達経路の変異がLPS誘発性アポトーシスを通じてALI/ARDSの発症に関連することが示唆された。
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