研究概要 |
最近侵襲に対する生体反応には個体差があり,その原因としてサイトカインや自然免疫に関する各種遺伝子多型の関与が明らかにされつつある。我々はこれまで,サイトカイン産生に関わる遺伝子多型解析を行い,その結果いくつかの遺伝子多型が,異常な高サイトカイン血症と関連し,転帰に影響を及ぼしていることが明らかになった。また,これら遺伝子多型の分布は人種により大きく異なることから,日本人独自のデータを集積することの重要性が明らかになった。本研究では,現在開発中の高感度DNAチップを用いて,短時間に複数の遺伝子多型を解析するシステムを確立し,ICU入室患者に対してインフォームド・コンセントを得たうえで,DNAチップを用いた遺伝子多型解析を行い,ハイリスク患者をスクリーニングし,これらの患者に対してIL-6血中濃度を測定しながらより適切な高サイトカイン血症対策を行うという個別化治療の確立を目指すものである。本年度は現在開発中のDNAチップに8っの一塩基多型(SNP)を同時に測定可能なプローベを開発し,DNAチップで解析されたデータを従来のPCR法で解析したデータと比較検討した。その結果,DNAチップは目標とした多型を正確に測定可能であり,さらに新規検体を用いたvalidation setでもその再現性が確認された。また,実際に臨床応用可能なチップに搭載するための遺伝子多型を同定するため,これまで検討してきた遺伝子多型に加え新たに数種類の遺伝子多型を検討し,各種の臨床指標について多変量解析を行った。現在その結果を解析し,実用化可能なDNAチップの開発に向け更なる検討を行っている。
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