近年侵襲に対する生体反応には個体差があり、その原因としてサイトカインや自然免疫に関連する各種分子の遺伝子多型の関与が明らかにされつつある。本研究では、現在開発中の高感度DNAチップを用いて、短時間に複数の遺伝子多型を解析するシステムを確立し、ICU入室患者に対してインフォームド・コンセントを得たうえで、DNAチップを用いた遺伝子多型解析を行い、ハイリスク患者をスクリーニングし、これらの患者に対してIL-6血中濃度を測定しながらより適切な高サイトカイン血症対策を行うという個別化治療の確立を目指すものである。本年度は、臨床応用可能なDNAチップ(Lab-on chip)の開発を進め、TNF-α、IL-1β、IL-6に関連する遺伝子多型8種類のSNPを同時に解析できるチップの作成と評価を行った。多数のSNPを同時検出可能なDNAチップによる解析結果は、従来のTaq-Manアッセイを用いた方法とすべて一致し、測定時間も従来の方法より短縮することが可能となり、本チップの臨床上の有用性が証明された。また、本DNAチップへ搭載する免疫一炎症反応に関連する遺伝子多型を決定するため、これまでに解析したサイトカイン関連遺伝子多型に加え、新たに活性化プロテインC及びMIF(macrophage immigrating factor)に関する遺伝子多型について臨床検体を用いて解析した。さらにこれまで解析した16種類の遺伝子多型結果と患者転帰や重症度、人工呼吸器装着期、腎補助療法の必要性などの臨床指標との関連性を、224症例の臨床検体で多変量解析を用いて検討し、DNAチップのコンテンツをほぼ決定した。
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