研究概要 |
口腔の機能は栄義の摂取であるが、単に食物摂取ではなく「美味しく食べること」はQOLの向上に極めて重要である。口腔内感覚のうち味覚は「美味しく食べること」について極めて重要な感覚である。本年度は口腔領域および消化器系における味覚受容関速分子の時間的・空間的発現および低塩分飼育における味蕾構成細胞の変化について検索した。 (1) 口腔領域および消化器系における味覚受容関連分子の時間的・空間的発現について 胃と腸管における味覚受容関連分子として苦味受容関連分子であるα-gustducin、甘味受容体としてT1R2/T1R3,うま味受容体としてT1R1/T1R3およびmGluRの遺伝子発現を検索したところ、いずれにおいてもα-gustducinは胎生18日、T1R1,T1R2,T1R3,mGluR1は胎生16日から遺伝子発現が認められ、有郭乳頭での発現開始時期とほぼ同じであった。有郭乳頭や消化管で甘味やうま味受容に関わる分子の遺伝子が胎生期から発現していることは、出生生直後からの栄養摂取に深く関わっていると考えられた。 (2) 低塩分飼育における味蕾構成細胞の組織化学的変化について 低塩分飼料で飼育したラットの有郭乳頭について組織化学的に検索した。その結果、低塩分飼料飼育では苦味、甘味、うま味受容に関わるII型細胞の組織化学的変化は認められず、塩味、酸味受容に関わるIII型細胞に組織学化学的変化が認められた。これらの変化は低塩分飼料を正常飼料にすることにより回復が認められた。このことから、栄養状態は味覚受容機構に深く関与することが明らかになった。
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