研究概要 |
感染状態におけるA群レンサ球菌の遺伝子発現を全ゲノムレベルで解析するため、M3型A群レンサ球菌SSI-1株のゲノム配列に基づき、全ゲノムを完全にカバーするように50-75bp(オーバーラップ20-25bp)のオリゴDNAを、Tm値がほぼ一定になるように+鎖、-鎖双方に設計し、合計38万プローブからなるタイリングアレイを作成した.このアレイは、既存のcDNAアレイ(約2000ORF)に相当する領域だけでなく、機能未知な領域であるintergenetic領域についても同じ密度で検出できるため、現時点ではもっとも高感度な遺伝子発現を解析することが可能である.このアレイを用いて各増殖フェーズにおけるA群レンサ球菌SSI-1株の遺伝子発現を解析した.その結果、液体培地中ではゲノムに認められた大部分の遺伝子を発現し,本アレイを用いることで,全ゲノムレベルで経時的に変動する遺伝子群(オペロンなど)を定量的に解析することが可能であった.また,多くのnon-coding RNAが存在し,転写調節に関与していると考えられた.感染実験の結果からは,液体培養時とは大きく発現パターンが異なり,感染時に特異的な遺伝子が発現することがわかった.さらに感染後,発現する病原性に関与する遺伝子群の発現が変化していくことが明らかになった.これら遺伝子群の制御系を解析することにより,多彩な疾患の発症機構が明らかになるものと考えられる.
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