研究概要 |
本実験の目的は、すでに骨吸収抑制効果および炎症抑制効果が明らかとなっているW9ペプチド(Aokiet al. J Clin Invest 116(6):1525-1534, 2006, Saito et al. Arthritis Rheum. 56:1164-1174,2007)を臨床応用する為に、ナノゲル/W9ペプチド複合体が徐放性ポンプを使用しなくても骨破壊を抑制できるか否かを明らかにすることにある。昨年の実績より、CHPナノゲルとW9ペプチドとの複合体がW9単独投与と較べて4分の一の投与量で効果があることがわかったが、さらにより良いコントロールシステムの構築のために、ナノゲルの一種であるハイドロゲル(CHP nanogel cross-linking hydrogel (CHP-PEG hybrid nanogels))を用いて、前年度と同様に低カルシウム食飼育マウスを用いた実験を行った。2mg/kg/day,10mg/kg/dayの投与量で7日分のW9量を含有させたハイドロゲルをマウスの皮下に埋めた群、ハイドロゲルだけ埋めた群、W9だけ投与した群を比べてみると、低カルシウム食飼育によって減少した骨密度を10mg/kg/dayのW9ペプチドを含有したハイドロゲルを埋めた群のみ、回復させることができた。骨形態計測法による解析の結果、骨量の変化も骨密度と同様な結果が得られ、低カルシウム食飼育による破骨細胞数の増加も10mg/kg/dayのW9を含有させたハイドロゲルを皮下に埋めた群では、正常カルシウム食群と有意差がないレベルまで減少していた。昨年行ったCHPナノゲルを皮下に投与する実験では、一日の投与量が減ったとはいえ、48mg/kg/dayの投与量が必要であったが、今回はその4分の一以下の投与量で骨吸収抑制効果が発揮されたことになり、W9ペプチド単独投与による大量頻回投与に比べると、16分の一以下の用量で効果を発揮することが明らかとなった。現在まだ新しいタイプのナノゲルも合わせて、将来の臨床応用に向けて検討中である。
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