1. IhhシグナルとSox9のクロストーク 研究代表者らは、前年度に、Ihhが軟骨細胞の分化、特に石灰化などの後期分化を著しく促進することを見出した。この作用は、PTHrPに非依存性であった。過去の研究によって、IhhがPTHrPの発現を促し、その結果、後期分化を抑制することが示されている。そこでこの相反する事象を分子レベルで明らかにするために、IhhのPTHrP産生の分子メカニズムを検討した。その結果、Ihhは、Gliシグナルを活性化し、GliはSox9ファミリーと相互関係することにより、PTHrP産生を著明に促進することが見いだされた。さらにSox9ファミリーがPTHrPプロモーター領域に直接結合し、その転写活性を著しく促進することが明らかとなった。このPTHrP誘導効果は、ドミナントネガティブSox9の過剰発現、シクロパミン処理、あるいは、ドミナントネガティブG1i2の過剰発現により抑制された。したがって、PTHrPは、Sox9の新たな転写ターゲットとして同定され、さらにIhhシグナルとSox9のクロストークが重要な役割を担っていることが強く示唆された。 2. IhhシグナルとRunx2のクロストーク 次に、IhhのPTHrP非依存性の作用を理解するために、IhhシグナルとRunx2の相互関係を検討した。その結果、Ihhは、Runx2と協調して、軟骨細胞分化を促進することが示唆された。したがって、Ihhシグナルが、PTHrP依存性およびPTHrP非依存性の方向性は、Sox9とRunx2の濃度勾配によって支配されていると考えられた。
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