研究概要 |
Mycoplasma salivarium由来リポタンパク質のN末端領域をもとに合成されたジアシルリポペプチドFSL-1はToll-like receptor 2(TLR2)の特異的なリガンドである。樹状細胞(DC)に発現するC-typeレクチンであるDC-SIGNは、DCとT細胞や内皮細胞との結合を媒介する接着レセプターとして、また、病原体や自己抗原の糖構造を認識するパターン認識レセプタ-として自然免疫ならびに獲得免疫において様々な役割を果たしている。 本研究では、TLR2によるリガンド認識を及ぼすDC-SIGNの役割について検討した。昨年度は, HEK293細胞にTLR2およびDC-SIGNを遺伝子導入し、免疫沈降法でTLR2とDC-SIGNの会合を調べた。A/J mouse由来の樹状細胞であるXS106細胞(Toledo大学Dr. Takashimaより分与)を用いた研究成果を報告した. 今回は, ヒト単球系細胞株でTHP-1細胞をGM-CSFならびにPMAで分化誘導した細胞を用いた、 分化したTHP-1細胞はTLR2およびDC-SIGNを発現しており、FSL-1の刺激で炎症性サイトカインの産生が増強された。しかしながら、FSL-1のサイトカイン増強活性はDC-SIGNのリガンドである結核菌のリポアラビノマンナン(Man-LAM)刺激によって有意に減弱した。また、FSL-1刺激によりNF-kBの転写活性がFSL-1の濃度依存的に増強したが、Man-LAMの刺激によってその増強活性は有意に阻害された。 以上の結果から、TLR2のシグナルとDC-SIGNのシグナルがクロストークし、TLR2シグナルによる炎症性サイトカイン産生が減弱したものと推測している。
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