研究概要 |
Mycoplasma salivarium由来リポタンパク質のN末端領域をもとに合成されたジアシルリポペプチドFSL-1はToll-like receptor 2(TLR2)の特異的なリガンドである。樹状細胞(DC)に発現するC-typeレクチンであるDC-SIGNは、DCとT細胞や内皮細胞との結合を媒介する接着レセプターとして、また、病原体や自己抗原の糖構造を認識するパターン認識レセプターとして自然免疫ならびに獲得免疫において様々な役割を果たしている。 本研究では、TLR2によるリガンド認識を及ぼすDC-SIGNの役割について検討した。これまでに,A/J mouse由来の樹状細胞(DC)であるXS106細胞(Toledo大学Dr.Takashimaより分与)ならびにヒト単球系細胞株でTHP-1細胞をGM-CSFならびにPMAで分化誘導した細胞を用いて、DC-SIGNのリガンドである結核菌のリポアラビノマンナン(Man-LAM)刺激がTLR2のシグナルを有意に減弱させることを明らかにした。今回はヒト末梢血単核球からGM-CSFとIL-4でDCに分かさせてMDDCを用いて以下のことを明らかにした。 TLR2のリガンドであるFSL-1によるMDDCの刺激はセリン・スレオニンキナーゼであるRaf-1のSer338のリン酸化を誘導した。Man-LAM単独でMDDCを刺激してもRaf-1のSer338のリン酸化はみられないが,FSL-1とMan-LAMでMDDCを同時に刺激するとRaf-1のSer338のリン酸化の程度が減弱した。 以上のことから,DC-SIGNによるTLR2を介したNF-kB活性化の減弱にはRaf-1のSer338のリン酸化が関与していることだ示唆された。
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