研究課題/領域番号 |
19390482
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
林 美加子 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (40271027)
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研究分担者 |
岩見 行晃 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 助教 (90303982)
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キーワード | 歯学 / 象牙質 / コラーゲン / ナノインデンテーション / エックス線回折 / 顕微赤外分光分析 / 顕微ラマン分光分析 |
研究概要 |
昨年度は、象牙質を110-140℃に加熱すると、異方性を示しながら曲げ強さ、微小引張り強さ、および破壊靭性値が有意に増加し、加熱は象牙質の強化に有効であることを明らかにした。 今年度は、加熱による象牙質強化のメカニズムを、原子間力顕微鏡を用いたナノインデンテーション、エックス線回折、顕微赤外分光分析および顕微ラマン分光分析にて多面的に分析した。 原子間力顕微鏡を用いたナノインデンテーションでは、110-140℃の加熱によって、管周象牙質には変化が認められなかったものの、管間象牙質に相当する部位の微小押し込み硬さと弾性係数が、それぞれ加熱前の1.4倍および1.8倍に有意に増加し、コラーゲンに富む管間象牙質が選択的に強化されたことが分かった。 また、エックス線回折では、110-140℃の加熱によって、コラーゲン分子のトリプルヘリックス間の距離が13.6Aから約10.7Aに約30%縮まることが明らかとなった。 さらに、顕微赤外分光分析および顕微ラマン分光分析により、加熱によるコラーゲンの分子構造における変化を解析した結果、ポリペプチドの平面構造を規定しているアミドIおよびIIといった基本骨格構造やその他の分子構造には顕著な変化が起っていないことが明らかになうた。 以上の結果より、加熱による象牙質の強化メカニズムは、コラーゲンネットワークの緻密化によって象牙質が構造体として強化されるためであることが明らかとなった。また、110-140℃の加熱では、ハイドロキシアパタイトに被包されている象牙質のコラーゲンは変性しないことも明らかとなった。
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