研究概要 |
平成21年度は最終年度であり,赤外線サーモグラフィによる効率のよい破折検出手法の条件および手技を絞り込み,臨床応用への足掛かりとした。歯科用超音波治療器(スプラソンP-MAX,サテレック社製)に4種のチップ(湾曲型チップ(URMペリオハードチップHY-1),直線型チップ(B.R.DチップTK1-1L),スケーラーチップ(スプラソンチップ#10),クラウン撤去用チップ(スプラソンチップ#5)(いずれもサテレック社製))を取り付け,37℃の環境下,出力(0.43W~1.48W)と超音波負荷部位(亀裂からの角度:0°,30°,45°,60°,90°)を変化させ,根管壁に微小振動を与えた(n=5)。亀裂面に生じた摩擦熱を赤外線カメラ(Advanced Thermo TVS-500EX,日本アビオニクス社製)にて記録し,サーモグラフィ解析を行った。さらに,超音波負荷なしの状態でも同様のサーモグラフィ解析を行い,亀裂面からの赤外線放射が本計測に影響を与える空洞放射効果の有無を検証した。その結果,径が小さく根管内に挿入可能な2種のチップ(湾曲型チップ,直線型チップ)では,VibroIR法による根管壁部分亀裂の検出が可能であった。一方,径が大きく根管内に挿入が困難な2種のチップでは,亀裂の検出は容易ではなかった。直線型チップと湾曲型チップによる検出可能時間では,超音波負荷部位による差はあるものの,直線型の方が短い傾向が認められた。超音波負荷部位が亀裂から90°の位置では,どの条件でも今回の出力範囲では亀裂検出は困難であった。サーモグラフィにて検出できた亀裂はSEMおよびTEM観察により検出位置と同一部位に実亀裂を確認した。また,今回の試験条件の亀裂幅では空洞放射現象は計測に影響を与えないことが確認できた。これらのことから,摩擦熱発生源として歯科用超音波治療器を用いることで,赤外線サーモグラフィによる歯根破折検出が可能であり,臨床手法としても有望であることが示唆された。
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