研究概要 |
(1)歯根膜幹細胞株の表面抗原解析 当研究室において樹立したヒト歯根膜幹細胞株(1-17細胞株)は、すでに骨髄の間葉系細胞マーカーであるCD13, CD29, CD44, CD90, CD105, CD166を発現しており、またCD18ならびにCD34の発現は認められなかった。また私達はヒト歯根膜前駆細胞株(1-11細胞株)も同様の発現形態をしていたが、両細胞株が発現する表面抗原について、cDNAマイクロアレイ法を用いて詳細に検討したところ、CD37ならびにCD83の発現が1-17細胞株において減少していることが明らかになった。 (2)1-17細胞の神経細胞分化への影響 これまでに間葉系幹細胞が傷害された神経細胞の機能回復に働くことが報告されていることから、神経細胞への分化能をもつPC-12細胞を用いて、1-17細胞株による影響について検討した結果、1-17細胞株は培養液中に神経細胞誘導因子ならびにPC-12細胞の遊走を促進する物質を分泌していることが明らかになった。また1-17細胞株はPC-12細胞のアポトーシスを抑制する効果があることが示唆された。これら一連の作用は、1-17細胞株がnerve growth factor(NGF)を分泌していることによることが示唆された。 (3)歯根膜細胞の骨芽細胞様分化 歯根膜組織の再生にカルシウムが深く関わっていることをこれまでに報告しており、カルシウムが歯根膜細胞に及ぼす影響について詳細に検討したところ、歯根膜細胞の増殖能を促進し石灰化を促進した。さらにカルシウムによってbone morphogenetic protein 2(BMP2)の発現が誘導されることを明らかにした。 以上より、歯根膜幹細胞を用いた歯根膜再生において、足場の因子にはカルシウムが含まれていることが重要であり、また細胞成分としてCD37またはCD83の発現が鍵になっている可能性が示唆された。
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