研究概要 |
(1) 歯根膜再生に関与する因子 Wnt3a刺激はヒト歯根膜細胞に対してosteopontin, osteocalcin, periostin, type I collagen等歯根膜関連タンパクの発現には影響を及ぼさなかったが、TGFβは歯根膜幹細胞/前駆細胞株の歯根膜線維芽細胞様細胞への分化を促進した。一方FGF2は、これらの細胞株に対して、線維芽細胞様細胞への分化を抑制することが明らがになった。またEMDは歯根膜幹細胞株のセメント芽細胞/骨芽細胞様細胞分化を抑制したが、前駆細胞株に対しては促進した。さらに今回、心筋細胞に影響を及ぼすことが知られているangiotensin II (AngII)が、機械的刺激を受けた歯根膜細胞において発現し、AngIIはtype I collagen, fibrillin, TGFβの発現を増大させることを明らかにした。この結果から、AngIIは歯根膜組織再生に関わる形態形成因子の候補としてあげられることが示唆された。 (2) ヒト歯根膜幹細胞株の生体への移植実験 私達が樹立した、ヒト歯根膜幹細胞株(1-17細胞株)ならびに前駆細胞株(1-11細胞株)を、免疫不全ラットの歯根膜欠損部位に移植した結果、1-11細胞株はセメント質・骨・歯根膜線維組織にホーミングし、1-17細胞株は歯根膜線維組織のみにホーミングすることが明らかになった。これらの結果から、未分化な歯根膜細胞は、その分化の程度によって歯根膜組織内での分化様式が異なっており、さらにその分化の方向を決定する因子が存在することが示唆された。そこで、各々の細胞株が発現する遺伝子について検討した結果、この制御因子としてジンクフィンガータンパクが関与することを明らかにした。
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