研究概要 |
研究の最終年度である本年度はOCPの骨伝導能と吸着タンパク質との関連性の解明を目的として,ラット血清を用いてOCPおよびHAに吸着するタンパク質を網羅的に定性分析しカタログ化を試みた.OCPは既報(Suzuki O et al., Tohoku J Exp Med 1991)に準じて湿式法にて合成し,X線回折,FTIRおよび化学分析にて同定した.HAは市販の医療用セラミックス焼結体を用いた.OCPとHAを32-48メッシュに整粒した(300~500μm).BET法による比表面積を参考にし,表面積を一定となるようにラット血清に懸濁し37℃,24時間撹拌させた後,Fisherらの方法にて4Mグアニジン塩酸,0.5M EDTAによるミネラル結合タンパク質を抽出し,また,血清主要タンパク質を除去した.試料をトリプシン消化後,LC-MS/MSを用いて分析し,IPI Databaseを用いてデータ解析を行なった.OCPおよびHAでそれぞれ100種類を超えるタンパク質を同定し,共通タンパク質は40種類であった.さらに,c軸方向に長大に結晶成長させたOCPを合成し(Honda Y et al., Tissue Eng 2009),同様の検討を行ったところ,従来OCPと異なる吸着傾向が認められた.以上から,OCPとHAあるいはOCPの結晶調節により,吸着するタンパク質の吸着傾向が異なることがわかった.今回のカタログ化はOCPの骨伝導能の機序に新たな示唆を与えるものである.
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