研究概要 |
本研究は,チタンインプラント表面から骨・血管新生を誘導する生理活性物質を徐放することによって埋入部周辺の骨再生を誘導するための基盤技術を確立することを目的としている。平成20年度までは、純チタン円柱に内空を設け、そこに成長因子bFGFを含有したβTCP配合ゼラチンスポンジを填入することで,薬剤徐放システムを組込んだインプラント体を作製した。また、これをラット大腿骨に埋入したところ、インプラント体周囲および埋入方向に対して垂直的にも著明な骨組織の新生誘導を認め、このシステムの周囲骨再生への有効性が示唆された。ただし、bFGFなどの成長因子は分子量の大きな蛋白質であるため、実際の臨床応用を考えた場合には安全性や費用対効果の点で問題が残る。本年度は、b-FGFの代わりとなる小分子生理活性物質として、昨年度までに有用性を示唆してきたSVVYGLR血管新生ペプチドに着目し、このペプチドが骨芽細胞および破骨細胞に及ぼす影響を検討した。その結果、同ペプチドはαvβ3インテグリンを介して骨芽前駆細胞の接着・増殖能を促進する一方で破骨細胞の分化を抑制し、ラット生体内で骨組織再生を促進することが明らかとなった(Biomaterialに発表)。また、同ペプチドを含有した水和ゲルをインプラント体に組込み,これをラット大腿骨に埋入したところ、インプラント体と骨界面には高い骨接触率(オッセオインテグレーション)を認めたが、周囲への骨新生作用は認めなかった。さらに、骨新生に作用する新規の小分子生理活性物質を探索するため、破骨前駆細胞のNFATレポーター株を作製し、小分子化合物のライブラリースクリーニングを行うた(J Oral Biosciに発表)。その結果、β-カルボリンアルカロイドの一種であるharmineが破骨細胞の分化に抑制的に作用する小分子化合物であることが明らかとなった。
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