研究課題
目的:骨格筋の成体幹細胞はインスリン様増殖因子(IGF)によって調節されている可能性がある。よって本年度はIGFシグナルについて研究を行った。IGFはインスリン様増殖因子受容体1(IGFR1)を介して細胞内にシグナルが伝達される。そのシグナルが低下することにより筋萎縮が起こると考えられている。老化に伴い顕著な筋萎縮が起きるとはよく知られているが、老化による筋萎縮とIGFシグナルの関係は明らかになっていない。本研究においては、この関係を明らかにするために、老化促進マウス(Klotho)の咬筋、舌筋、腓腹筋におけるIGFR1の発現変化を調べた。材料と方法:実験には6週齢のKlotho及び正常マウス各6匹を用いた。咬筋、舌筋、腓腹筋を摘出し、湿重量を測定した。Real time PCR法によりこれらの筋におけるIGFR1 mRNA発現量を測定した。結果:Klothoマウスの咬筋、舌筋、腓腹筋の湿重量は、正常マウスと比較して、それぞれ71%、45%、72%という顕著な減少を示した(p<0.01)。体重当たりの相対的な筋重量は、Klothoマウスの咬筋、腓腹筋では、正常マウスと比較してそれぞれ19%(有意差なし)、23%(p<0.05)の減少を示したが、舌筋は逆にKlothoマウスの方が正常マウスより51%大きくなっていた(P<0.01)。IGFR1 mRNA発現量は、Klothoマウスの咬筋、腓腹筋では、正常マウスと比較してそれぞれ1100%、71%の増加を示したが(p<0.01)、舌筋ではKlothoマウと正常マウスの間で有意な差は認められなかった。考察:老化が筋萎縮に及ぼす影響は、咬筋、腓腹筋と比較して舌筋が小さいことが示された。筋萎縮の程度とIGFR1 mRNA発現の間に何らかの関係があると考えられる。
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