研究分担者 |
井上 勇介 福岡医療短期大学, 歯科衛生学科, 准教授 (20105688)
早川 徹 日本大学, 松戸歯学部, 准教授 (40172994)
岡畑 恵雄 東京工業大学, 生命理工学部, 教授 (80038017)
土井 豊 朝日大学, 歯学部, 教授 (40116067)
武田 昭二 大阪歯科大学, 歯学部, 准教授 (20067185)
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研究概要 |
ポリカチオン(ポリアルギニン,ポリヒスチジン,ポリリジン)とDNAを反応させたところ水不溶性のDNA複合体が得られだ。凍結乾燥したこれら複合体をSEMで観察したがすべて多孔質で各部位に大小の気孔が認められた。SEM像から気孔率はDNA/ポリリジン複合体>DNA/ポリアルギニン複合体,DNA/ポリヒスチジン複合体の順と思われた。これら複合体の細胞生存率(繊維芽細胞L-929)は56%〜88%で,DNA/ポリアルギニン複合体,DNA/ポリリジン複合体,DNA/ポリヒズチジン複合体の順に生存率は高かった。しかし,ラット皮下埋入実験においては3種とも大きな差異はなかった。すなわち,埋入3目後,材料は周囲を細胞成分に富む肉芽組織で取り囲まれて皮下組織に存在し,材料埋入による生体の急性炎症反応(軽度)が認められた。埋入10目後は炎症も治まり,典型的な異物肉芽腫の像を呈していた。将来的には埋入材料が消失し,完全な器質化(線維性結合組織に置き換わる)により反応が終了するとこが推測された。よって,これら複合体は生体材料として有望であることが確認できた。一方,前述した方法で合成したDNA/キトサン複合体(凍結乾燥前)の粘性はシリコン印象材と近似しており,インジェクション型スキャフォールド材に適した粘性を有していた。この粘性を利用してモールドに注入し,PBSバッファーでリンスすればDNA/キトサン複合体の加工成形は可能である。加工成形したデスク状のDNA/キトサン複合体をラット皮下の3ケ月間埋入したところ,まずカプセル化が起こり,そして分解しながら器質化が始まることが判明した。生体分解速度,粘性,生体組織反応などの結果からDNA/キトサン複合体はインジェクション型スキャフォールド材に有効と考える。
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