研究概要 |
本年度は3T3細胞をフィーダーレイヤーとしたマラッセの上皮遺残細胞の培養方法を確立した。 われわれは,今までに3T3-J2細胞と鐘状期歯胚上皮細胞を混合培養することで,歯胚上皮細胞の初期の形質を維持しながら継代培養に成功している。そこで,同じ手法を用いることで,マラッセの上皮遺残細胞の形質を維持したまま継代培養できることが確認できた。 マラッセの上皮遺残細胞の形質の維持の確認には,二つの方法で検討した。第1に,マラッセの上皮遺残細胞からmRNAを採取し,現在までにマラッセの上皮遺残に発現することが知られている細胞特異的な上皮細胞のマーカー遺伝子およびエナメルタンパクのマーカー遺伝子群の発現をRT-PCRによって比較,解析を行った。RT-PCRの結果では,初代マラッセの培養細胞と10継代した培養マラッセの上皮細胞においてその遺伝子発現パターンは類似していた(歯周病学会にて発表)。 さらに,継代した培養マラッセ上皮遺残細胞のタンパクの発現を解析した。継代培養した細胞を,マラッセの上皮遺残細胞から上皮細胞のマーカーとなるサイトケラチンとエナメル関連タンパクのアメロゲニンの発現を抗体をもちいて,免疫細胞化学的に検討したところ,継代培養したマラッセの上皮細胞はサイトケラチン14陽性で有り,アメロゲニン陰性であり,この発現パターンも初代培養を類似していた(歯科基礎学会にて発表)。 これらの結果からわれわれの手法で培養増殖させたマラッセの上皮遺残細胞は,表現系を維持したまま,培養増殖されていることが示唆され,本年度計画していた実験は予定通り終了し,次年度に移行する。
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