研究課題
骨欠損に対する治療や骨増大法のゴールドスタンダードとして、自家骨移植が広くおこなわれている。自家骨移植は、採取骨量に限りがあること、採取部位に炎症を惹起することが問題である。自家骨に代わりに種々のリン酸カルシウム系の骨補填材が使用されているが、歯科領域の様々な骨欠損において、どの骨補填材が適しているかについては明らかではない。さらに、現在使用されている骨補填材は、自家骨の完全な代替材料としては力不足である。本研究の目的はこれらの問題点を解決することである。本年年度は以下の実験結果を得た。(1) α-TCPとβ-TCPのブロックをウサギの頭蓋骨に置き、そのブロックをチタン製のキャップで覆い組織学的に検索した。両ブロックとも骨伝導性を示し、新生骨の形成と共に吸収されたが、β-TCPに比較してα-TCPにおいて新生骨の形成と吸収は大きく、両材料は大きく性質が異なることを明らかにした。(2)プロスタグランディンE1をラットの抜歯窩に、VEGFをウサギの頭蓋骨のGBRモデル、FGF4をラットの大腿骨骨髄に適用し、これらの分子が骨形成を促進し、骨組織の再生に有効に作用することを明らかにした。(3) コレステロール合成阻害薬であり骨芽細胞のBMP2発現を促進するシンバスタチンを含む硫酸カルシウムが、ラット頭蓋骨骨欠損部の骨再生を促進することを明らかにした。シンバスタチンの用量を変えて、薬物キャリアとしてα-TCPの顆粒を用いて同様の実験モデルを用いて実験をおこない、骨組織再生に適したシンバスタチンの濃度を明らかにした。(4) 東京医科歯科大学歯学部倫理委員会の承認を受け、シンバスタチンを含むα-TCP顆粒の臨床試験を開始し、その試験結果を解析した。11症例の全症例(インプラント除去後の骨欠損、抜歯後の治癒不全、抜歯直後の抜歯窩への適用)において炎症等の問題は起きず、X線写真において周囲骨との境界が経時に不明瞭となったことから、適用した材料の新生骨との置換が示唆された。
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