研究概要 |
(1)HE染色標本にて病理確定診断を得た,10例の頭頸部扁平上皮癌の生検組織のホルマリン固定パラフィン包埋材料を用いて,抗p53抗体および抗p33ING1b抗体による免疫組織化学的検索を行い,その局在を確認するとともに,腫瘍部分よりmicrodissection法にてDNAを抽出し,p53遺伝子変異のhot region(exon5-8)についてPCR-SSCPにて変異の有無をスクリーニングし,変異を認めたexonについてdirect sequencingにて変異部位を特定した.さらにp53の遺伝子変異した扁平上皮癌組織において抗NF-κB抗体による免疫染色を行った.これらの結果からp53遺伝子の明らかな変異が認められたサンプルにおいて,p33ING1b発現の消失傾向を認め,反対に同サンプルにおいてNF-κB発現の増大傾向を認めた. (2)5種類の頭頸部悪性腫瘍細胞株(HSC-2,-3,-4,Ca9-22,KB細胞)を用い,p33ING1b遺伝子およびタンパク質の発現状況を検索したところ,いずれの細胞においても自発的な発現を認めた.さらにReal time RT-PCR(qRT-PCR)法によりp33ING1b遺伝子の発現量の検索を行ったところ,HSC-3細胞において最も低く,KB細胞において最も高い発現量を示した.各細胞株についてp53遺伝子変異の検索を行ったところ,KB細胞のみがp53 Wild Typeであった.そこでHSC-3およびKB細胞にTNF-αを作用させた上で,NF-κB遺伝子の発現量が増強しているか否か確かめるためにqRT-PCR解析を行った.この結果,KB細胞においてはTNF-α刺激後30分でNF-κB発現量のピークを迎え,その後徐々に減少した.ところがHSC-3細胞においては著名なNF-κB発現量の減少は認められなかった. (3)p53 Wild TypeであったKB細胞に対してp33ING1b遺伝子の形質導入を行い,Western blot法にて確認した後,タキソールおよびシメチジンを時間と濃度を変えて作用させた際のKB細胞およびp33ING1b導入KB細胞の増殖阻害効果を比較検討するためにWestern blot法によりCaspaseの活性化を検索した.その結果,KB細胞に比べp33ING1b導入KB細胞においてタキソール処理後6時間で濃度依存的に著名なCaspase-3,-7および-8の活性化によりアポトーシスに陥ったことを確認した.メチジン処理後6時間の細胞においてはCaspase-9の活性化のみが検出された.
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