研究概要 |
口腔癌の中心的原因のひとつであるp53遺伝子変異は,30~50%の症例において認められている.また核内転写因子NF-κBはアポトーシスを抑制する作用をもち,癌化に深く関与することが知られているが,最近になってNF-κBの機能はp53遺伝子によって調節されていることが解った.さらにp53のco-factorとして知られるINGファミリーがp53依存性アポトーシス誘導に重要な働きをしていることが明らかとなった.本研究においてp53癌抑制遺伝子の明らかな変異が認められた口腔癌の組織サンプルにおいて,p33ING1b発現の消失傾向を認め,反対に同サンプルにおいてNF-κB発現の増大傾向を認めた.なお,頭頸部悪性腫瘍細胞株(HSC-3,KB細胞)においても同様の傾向が確認された.さらにp53正常株であるKB細胞に対してp33ING1b遺伝子の形質導入を行い,抗癌剤(タキソール)を時間と濃度を変えて作用させた際の細胞の増殖阻害効果を検索した.その結果,タキソールの作用により明らかに細胞死に陥ったことを確認した.
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