研究概要 |
FasL/TRAILはデスレセプター(Fas/DR4, DR5)と結合すると、速やかにFADDとcaspase-8との複合体、DISCを形成する。c-FLIPは、DISC形成に際してcaspase-8とヘテロダイマーを形成してcaspase-8の活性化を抑制する。本研究では、扁平上皮癌細胞のc-FLIPの発現に着目し、その制御機序について検討した。その結果、c-FLIPのアンチセンスを導入した扁平上皮癌細胞が抗Fas抗体やTRAIL誘導アポトーシスの感受性を亢進することを確認した。 扁平上皮癌を含む種々の癌細胞はFasやTRAILRを高発現しているが、FasLやTRAILによるアポトーシスに抵抗性を示すことが多い。頭頸部癌治療に汎用されている、CDDP、5-FUおよびDOCは癌細胞のFasの発現増強やc-FLIPの発現抑制を介してデスレセプター誘導アポトーシスを亢進することを示した。すなわち、扁平上皮癌細胞のアポトーシス誘導経路としてextrinsic経路も重要であることを示唆するものである。 本研究では、分子標的として臨床的に注目されている薬剤について、扁平上皮癌細胞のデスレセプター誘導アポトーシスへの影響について検討した。分子標的薬剤として抗EGFR抗体(C225)、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(AG1478)、PI3-K阻害剤(LY294002、wortmannin)、プロテアソーム阻害剤(MG132)とHDAC阻害剤(SAHA)を用いた。EGFR阻害剤、PI3-K阻害剤およびプロテアソーム阻害剤で処理した扁平上皮癌細胞は、抗Fas抗体およびTRAL誘導アポトーシスがc-FLIPの発現抑制を介して亢進された。プロテアソーム阻害剤は、DR4およびDR5の発現も増強した。さらに、これらの阻害剤は癌細胞のBcl-2ファミリーやIAPファミリーの発現変化も誘導した。
|