研究課題
表在性真菌症のうちでも紅斑性カンジダ症は偽膜性と比べて診断が難しいため、多くの症例の口腔粘膜症状を心因性と誤診された結果、数年あるいは十数年にわたり、根本的治療もされないまま放置されて来た。この現状を打開するため基礎的および臨床的調査および検査結果に基づき、正確な診断/治療法を確立することを目的として以下の研究を企図した。紅斑性カンジダ症を発症しやすいドライマウス外来において得られた臨床的・基礎的知見をプロファイル化し、診断マニュアル作成を試みる。またこれらの信頼度の向上のため双方向に検証ができるような全国的なネットワークを立ち上げる。以下に検討項目と結果を示す。1)口腔内の自覚・他覚症状とCandidaの検出率・菌数との相関分析を行い、診断に有用なCandida菌数カットオフ値を設定した。2)宿主血清学的検査データを分析したが、診断に有用なカットオフ値は得られなかった。3)微生物学的データと宿主要因の分析のために、簡便な舌背スワブによるCandidaの検出法の定量性について検討した。また得られたCandida菌株のgenotyping (DNA-PCR法)を行ったが、健常者との間に分布率の差は認められなかった。4)H-2ハプロタイプの異なる3系統のマウス口腔カンジダ症モデルにおいて、病理組織学的データ分析を行った。マウス3系統により感染感受性が明らかに異なり、さらにC.albicansの病原因子であるプロテアーゼおよびホスホリパーゼ産生能が高い菌株ほど角質層深部に到達するが、顆粒層には至らないことが明らかとなった。5)多施設におけるネットワーク作成を行うため、共通プロトコール、ケースカード、臨床研究参加のための説明文書、承諾書を作成し、症例蓄積を開始した。以上のように多角的に表在性真菌症の診断・治療法の確立とネットワーク作りの基盤が整備された。
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Oral Therap. Pharmacol. (歯科薬物療法) 28(1)(印刷中)