研究概要 |
1.動脈硬化の発症・進展状況の判定:病変部面積の分析結果から、P. gingivalis381株、33277株、II型線毛TDC60株、並びにA. actinomycetemcomitans HK1651株の経尾静脈感染群および経口投与群において動脈硬化の早期発症、促進が認められた。しかしながらApoe^<shl>マウスは動脈硬化自然発症マウスであるため、コントロール群も週令に依存して動脈硬化病変が増大し、19週令では感染群とコントロール群の差は認められなかった。S. mutans群はコントロールと同程度の病変を示した。 2.病原菌の検出:血液並びに病変組織からDNAを抽出し、歯周病原菌特異的プライマーを用いてPCRを行った。血液サンプルにおいては、P. gingivalis経口感染群の3/6、尾静脈感染群の5/6が陽性を示した(11週令)が、14週令では陽性は認められなかった。また、病変組織のサンプルにおいては、いずれの週令のマウスも陰性であった。 3.骨吸収の測定:P. gingivalis経口感染群において骨吸収の促進が認められた。 4.炎症性サイトカイン及び接着因子の測定:動脈硬化の誘発には炎症性サイトカインや接着因子が深く関係していることから、P. gingivalis感染がこれらの因子発現にどのように影響を与えているかをProtein array及びELISAにて検討した。11週令ではL-selectin、14週令ではGCSE, GM-CSE, IFN-γ,IL-6,IL-13,RANTES, TNP-α,VEGFおよびIL-8の増加が認められた。 以上の結果から、P. gingivalis等の歯周病原性細菌は炎症性サイトカインや接着因子の発現増加を介して、動脈硬化の進展に寄与しているものと推測された。今後、歯周病原性細菌により誘発される炎症が直接的なものか間接的なものか詳細に検討する。
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