本年度は、これまでに行ってきた口腔細菌叢の分析結果を効率的に解析するため下記の点について検討し、当初計画していた最終結果を得た。 (1) 細菌叢解析プログラムの開発:既に開発したTRFMAに基づき、菌の種類だけではなく、各菌種が全体に占める割合が求められるプログラムをモンテカルロ法による積分(面積)の近似解を求める方法を応用して作成した。 (2) T-RFLPパターンの統計処理方法の開発:多数のサンプルをまとめて解析するために、口腔細菌叢のパターン解析をさまざまな統計処理により、口腔の臨床徴候と比較検討できる方法を開発した。数百の分析サンプルのT-RFLPピークパターンを相関係数行列から菌種とピークの対応を推定する方法を検討し、さらに、比較的単純な線形計画法で数値を処理して、システムに負担をかけずに多数の分析結果から菌種の割合を一度に計算するシステムを構築した。 (3) クローンライブラリー法による計算結果の精度検証:上記(1)あるいは(2)によって算出した菌種推定および割合の計算の精度を検証するために、クローンライブラリー法で一つ一つの16S rRNA遺伝子の塩基配列を決定することで確認した。各サンプル100以上のクローンの塩基配列を決定し、菌種の同定を行ない、それぞれのクローンの個数を集計することで、割合の計算結果の精度が確認できた。 (4) T-RFLP法の効率化の進展:T-RFLP解析の精度向上と処理速度の向上を目指し、異なる2種の蛍光物質で標識したプライマーを用いて一つのDNA断片から2倍の情報を得るようにし、複数の制限酵素を利用することで断片に関する情報量を増した。2種の蛍光標識と2種の制限酵素を用いることで、従来の4倍の情報が得られ、解析の精度と速度が向上した。これに合わせた解析プログラムが必要となり、上記(1)および(2)のシステムも情報量の多い分析結果を処理できるように改変した。
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