研究概要 |
本年度は、これまで明らかになった看護師および初学者の看護技術映像および視線データ,初学者の看護技術習得時の誤りや特徴などから,熟達者のもつ看護技術のコツ(技:わざ)を伝承するためのeラーニングシステムのプロトタイプの仕様書を作成し,開発を行い、看護学生を対象に評価実験を行った。静脈注射技術における看護師の視線の特徴は、手順の次の処理へと移動しており、先行処理をしていると考えられる。初学者の視線は、技術に専心するためか、手元を注視する傾向があり、手技が単純になると先行処理を行う特徴がみられた。また、静脈注射実施時のコツについて聞いたインタビュー調査では、看護師は穿刺する静脈の選定に時間を割き、静脈の深さや太さ、弾力性について、視覚と触覚で注意深く確認し、その上で成功した(刺入できた)際の感覚をシミュレーションすることをあげていた。一方初学者は、正確に手順を実施することをあげていた。これらのことから、同じ静脈注射技術の実施であっても、看護師と看護学生の意識の違いがあることが明らかになった。よって、初学者に対する学習支援システムにおいては、最初に正確な手順を習得させるためのプロセスが重要であると考えられる。その上で、看護師と自分の看護技術映像の比較を行い、熟達者との技術方法の違いに気付かせる。さらには初学者自身のトレーニング前後の映像との比較を行い、熟達の過程を認識できるようなプロセスを取り入れることが効果的であると考えた。本研究では、こうした学習モデルに基づき、看護技術の実施映像および視線映像をコンテンツとして用い、Webベースで学習できるeラーニングシステムを開発した。これにより、従来の看護技術教育が、手本となる看護技術手順映像を用いた一方向的なものから、学習者自身が自分の看護技術を看護師や学習前の自分と比較して内省することにより学習することを可能にした。
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