目的:Webの情報に翻弄されず、むしろその情報を活用できるための患者・家族・国民のヘルスリテラシーの向上を支援するWebコンテンツを作成することを目的とした。 結果と考察:コンテンツは2つであり、1つ目は、Web2.0型のQ&Aサイトに投稿された質問と回答を利用して、患者や家族などが、Web上の情報によってかえって混乱した事例について、それがいつ、なぜ起こり、いかに支援可能なのかを明らかにする事例集あるいは問題リストであった。この事例集では、Webの検索時期は症状や兆候の経験前から出現後の対処方法、医療機関への受診後、治療の前後まで幅広く多岐にわたること、医療者またはWebからの情報と自分の知識や経験との整理・統合に困難が生じていたこと、医療者と患者・市民は一時点でのかかわりのため、その合間に不明点や疑問をWebで調べていることを認識する必要があることが明らかとなった。事例集は、これらを線で結び、Webによる情報化時代の保健行動の課題と支援の明確化を可能にし、多様な事例の存在を確認でき、実際の継続的なコミュニケーションのあり方に貢献できると考えられた。 2つ目は、看護職と市民向けに、EBM、ヘルスリテラシー、ヘルスコミュニケーション、ヘルスプロモーション、ストレスコーピング、ソーシャルキャピタルなどの研究成果をわかりやすく解説したものである。内容は、情報に基づく意思決定の必要性、信頼できる情報とはエビデンスとナラティブ情報、それがWebで提供されそこに誰もが参加できるWeb2.0の時代、情報の提供・普及方法として受け手の立場に立ったヘルスコミュニケーション、情報の受け手に必要なヘルスリテラシー、個人が獲得する健康になるためのスキルとしての保健行動の理論、その行動を支え合いストレスも成長の糧とするサポート関係とコミュニティづくりであった。また、これらのコンテンツを評価するために幅広いヘルスリテラシー尺度の開発を開始した。
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