本研究の目的は、畳の布団上と在宅介護用ベッド上での在宅介護環境において、介護動作時の腰部と循環動態への負荷の少ない介護動作を明らかにすることである。介護技術の習得による負荷の違いを明らかにするため、同一者を継続して調査対象とし、介護の初心者が自己流で介護した時と、介護技術を習得してから介護した時を比較分析する。また、介護者用腰痛ベルトの効果を評価する。要介護者は利き腕に片麻痺のある要介護高齢者を想定した。 今年度は、おむつ交換、清拭、足浴の3つの介護動作を設定し、介護動作中の下半身の主動作筋と心拍数、介護動作前後の血圧、介護動作後の主観的身体疲労感の計測方法と解析方法を確立した。計測筋は左右の腰部脊柱起立筋・腹直筋・外側広筋、内側ハムストリングス筋の8筋を選出し、表面筋電計テレマイオ2400を装着した。解析は各筋のMAXを測定してMVCを算出し、マイオリサーチソフトにより実測データの正規化を行った。ビデオ画像をもとにして動作場面を12フェイズに分割し、3つの動作、および12フェイズごとに、布団上とベッド上、自己流と技術習得後、ベルト装着の有無別に各筋の積分値を比較した。心拍数はパルスオキシメータPalmSAT2500Aを装着して、4秒ごとに額の脈拍数を計測し、変動波形と平均値を比較した。血圧は介護動作後の上昇値を分析した。主観的身体疲労感はVisual Analog Scaleを用いた質問紙調査用紙を作成して、介護動作後に調査した。 調査対象者は健康な成人女性とし、これまでに研究参加の同意を得た9名の調査を終了している。今後、さらに対象者数を増やし、解析結果の一般化を行う予定である。
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