本研究は、第2次世界大戦末期の「マニラ戦」に対象を絞り、これを「実像」と「記憶」の両面から学際的・総合的に検討し、さらに収集史資料と研究成果を翻訳・発信することにより、戦争の過去をめぐる日本・フィリピン(比)・アメリカ合衆国(米)など関係諸国間の「より質の高い対話と和解」実現の一助となること、すなわち平和のための地域研究を目的とする。具体的には(1)「マニラ戦」における民間人の大量死と残虐行為・都市破壊の原因究明と(2)戦後における「マニラ戦」問題の展開を研究のふたつの柱とする。さらに後者の個別的な研究主題として、(1)「マニラ戦」をめぐる戦争責任問題の展開、(2)加害・被害の関係者や関係諸国民への社会・文化精神医学的な影響、(3)「マニラ戦」の記憶と表象を検討するとともに、(4)なぜこの問題が「南京事件」のように関係諸国間で「歴史問題」化していないのかを分析し、(5)今後「歴史問題」化する可能性はないのか、(6)「真実と和解」の望ましい道を実現するための課題は何かを検討して、その研究成果を実践的に社会に還元してゆく。
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