(1)目的 フィリピンでは数多くの森林再生援助事業が実施されてきたにもかかわらず、多くの事業は持続的な森林再生にはつながっていない。その原因として、外部組織によってつくられた森林再生・管理のための開発組織が地域社会に根付かないことにあると考えた。それはその地域社会に開発組織を根付かせるための仕組みが存在していないことに起因し、他方、そのような仕組みが存在する地域社会では援助事業終了後における持続的な森林再生・管理が見られるとの仮説をたてた。この仮説を検証するとともに、この仮説に基づいて地域社会に開発組織を根付かせるための仕組みが何であるかを考察することが本研究の目的である。 (2)調査対象地 仮説検証のために以下の3つの山村でフィールドワークを行う。それらは、(1)ミンダナオ島北ダバオ州ニューコレリア町エル・サルバドル村、(2)ミンダナオ島ブキドノン州バレンシア市コンセプション村、(3)パナイ島イロイロ州マアシン町ボロ村である。3村ともに村の全域が国有林地内に含まれ、1990年代に海外援助機関による植林事業の対象地になった村である。植林事業に関連して森林管理のための住民組織がつくられた。それぞれの住民組織の現状は、(1)の山村では機能不全に陥ったが、(2)と(3)の山村では管理機能が継続している。(1)と(2)の山村のフィールド調査はわたしが、(3)の山村でのフィールドワーク調査はアテネオ・デ・マニラ大学の永井博子氏が担当する。
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