研究概要 |
本研究は,旧帝国大学時代に海外に流出し現地に遺存した国学者の膨大な旧蔵書の精査を行ない,国内の資料によってのみ構築された傾向が否めない国学史を是正し,新資料ならびに新しい視座を内外の研究者に公表することによって,近世末期文壇像を再構成することを目的としている。 1)長沢文庫書誌調査 目的を遂行するために長沢文庫の書誌調査を行った。平成19年度は,2回にわたる現地調査を行い-夏季(8月6日〜10日,参加者14名)、冬季(2月13日〜16日,参加者9名)-,長沢文庫485点中,180点程度の書誌調査が完了。この調査によって,資料的価値のある書き入れ等をデータとして集積し,調査半ばであるが,長沢伴雄の実像により肉薄できたと考える。また,台湾大学図書館側から,この書誌データを元にした長沢文庫目録出版の要請がなされたため,下記作業と並行して,その刊行を計画していく。一方,国内では,長沢の著述調査とともに,長沢家の子孫を訪ねるなどの基礎的調査を行った。 2)一次資料『絡石の落葉』の書誌調査、翻字作業 20年6月より台湾大学出版会から順次刊行予定の歌文集『絡石の落葉』の翻字作業を行なった。同書に関しては画像データの提供を受け国内で翻字作業を行ない,詳細な書誌調査は現地調査の際に行なった。翻字作業は,近年,長沢伴雄研究を精力的に行っている研究協力者亀井森を中心に行ない,難読箇所については研究代表者高橋等が解読した。資料の公刊によって,長沢伴雄に関する基礎資料を学界に提供するとともに,近世後期京坂の和歌、国学壇の諸相解明においても寄与することができると考えている。
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