研究概要 |
本年度は,パキスタン-ギルギット-バルティスタン州-ゴジャール(北フンザ)地域において,当該言語に関する夏期調査(夏期50日)を実施し,成果のとりまとめを行った。調査・作業内容は以下の通りである。 1.基礎語彙チェック作業:前年度までに引き続き,新録基礎語彙収集,および,採集済み基礎語彙について逐語再確認作業を行った。 2.文法分析作業:現地インフォーマントより,民話・民俗誌/史譚に関わるテキストを収集した。加えて,インフォーマントへの聞き取り調査より,特に能格構文を含む格標示システム,使役動詞,関係詞を対象とした文例を抽出し,分析作業を進めた。 使役動詞については使役語幹形成接辞が他動詞・使役動詞の両方の形成に関わることは確認できたが,使い分けについては明確な規則性は認められなかったことから,さらなる考察を残すこととなった。また,関係詞については,構文のくずれなど多数散見された。この点は,タジキスタン側に分布するタジク・ワヒー語には認められないため,パキスタンの国語であるウルドゥー語や,近接言語との言語接触の影響などの観点を,これまで以上に考慮する必要性が出ることとなり,この点についても今後の課題となった。 3.調査終了後,データ整理と成果のとりまとめをおこなった。
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