研究課題
2010年度は、最終年度であるためこれまでに蓄積してきたコエ諸語のデータの分析結果を総合した。そして、本研究が計画段階から目指してきた、コエ語族カラハリ・コエ語派の系統分類の問題にたいする一つの解答を、新しい一次資料の提供とともに、提起する準備が整った。従来の定説では、ハバ語がグイ・ガナ語群に系統分類されているが、今年度に行った現地調査でハバ語の基礎語彙データの大幅な追加がなされた。その一次資料に基づき、ハバ語とナロ語とグイ語、ガナ語との比較が明らかにした音対応から、子音、母音、声調のいずれにも、ハバ語にはナロ語とおなじ歴史的音変化の起きたことが再建され、また、グイ・ガナ語群に起きた(そしていまも進行中の)子音の歴史的変化(非クリック歯茎閉鎖音の口蓋化)が、ハバ語には観察されないということが明らかになった。これは、従来の定説による系統分類が誤りで、正しくは、ハバ語はグイ・ガナ語群ではなく、ナロ語と同一の語群をなすと見なすべきだということを示す。さらに、追加的に収集することのできた、カラハリ・コエ語派内での系統的な位置が不明であったツィラ語の基礎語彙の分析から、この言語がガナ語のひとつの方言(しかも音韻史的にはもっとも保守的な一面をもつ変種)であるという事実が明らかになった。以上の、ハバ語およびツィラ語の系統的な位置づけに関する改訂と発見は、コエ語族比較言語学におけるカラハリ・コエの全体像を現時点でもっとも実証的で正確な理解する知見である。この成果の一部は、2011年7月に開催される国際コイサン言語学シンポジウムと国際歴史言語学会で研究発表する予定である。
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