研究概要 |
平成21年度は,メンバー各自が音韻・文法記述を継続的におこなうとともに,最終年度として,これまでの研究成果を類型論的視点から検討し,古アジア諸語の音韻的・文法的多様性と類似性に関する総括をおこなった。 大きく,文法面では連体修飾(コリャーク語,ユカギール語),ヴォイスや結合価(コリャーク語,チュクチ語),音韻面では弱化(ニヴフ語)に関する記述ならびに類型論的研究に進展が見られた。各メンバーの具体的な研究内容は,以下のとおりである。 呉人(惠)は,特にコリャーク語のいわゆる「形容詞」が,日本語の叙述類型論で提唱されてきた「属性叙述」をおこなう形式であることを調査研究により明らかにし,その形態的・統語的特徴を類型論的視点から考察した。これは,従来,属性叙述を特別に表す形式を持つ言語がまったく知られていなかった中で,叙述類型論に新たな展開をもたらしうる重要な寄与であるといえる。 遠藤(ユカギール語)は,コリマ・ユカギール語についての記述を進め,特に類型論的な視点から連体修飾構造,とりわけ複合名詞の性格の解明に努め,その成果を刊行した。また,ヨヘルソンによるユカギール民族誌の分析をおこなった。 呉人(徳司)(チュクチ語)は,チュクチ語のヴォイス,結合価について,モンゴル語などと比較しながら類型論的視点から考察した。加えて,チュクチ語の民話テキストの編纂に取り組んだ。 白石(ニヴフ語)は,ニヴフ語のテキストを編纂するとともに,音韻論的考察を進め,単著を英語で刊行した。
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