研究概要 |
この調査、研究の目的は,台湾原住民のブヌン族,ツォウ族,ヤミ族,パイワン族,そして,フィリピン北部のバブヤン島,イヴァタン島,イトバヤット島などに居住する消滅の危機にある少数民族の口誦を中心として,言語的な記述,分析を通して,人類学的,考古学的な観点で学際的に調査研究を行うことである。 このプロジェクトは,主に,海外調査を行い,フィリピン側は代表者の森口と山田の2名が,台湾側は,森口,笠原,野林,宮岡の4名が担当した。フィリピンでは,イトバヤット,イヴァタンの両島で伝承,歌謡,テキスト,文法の採集を行った。また,台湾側では,森口は,中部ブヌン族とヤミウ族の口誦の中に垣間見られる考古学的な事実を,そして,宮岡は,ツォウ族の伝承の中で解明される社会人類学的な規則を追求するための調査を行った。 特に,森口はブヌン族の特殊な社会言語学的な特徴である「言語的忌避行為」と「山ことば、里ことば」が,生業,儀礼,社会組織において生活を円滑に行うための民族的な一つの手段であることを明白にし,論文を執筆中である。この事実の発見は,原住民の記憶に残っている口誦の中から重要なヒントを得たことにそのきっかけがある。 また,長年行っているブヌン語辞典とイトバヤット語辞典の編纂に伴う現地調査を行い,翻訳と例文の追加を継続している。現在,最後のチェックを行っているところである。
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