研究3年目にあたる今年度は、以下の研究成果をあげることができた。 まず第1は、日・中共同による本研究の中間成果を、日本語と中国語の双方の言語でまとめて、広く公開することができたことである。すでに、日本語では『史学研究』や『海路』等の学術雑誌に「戦国大名領国の国際性と海洋性」「16世紀のBungoと大友宗麟の館」等の成果を発表してきたが、新たに、中国浙江大学出版社より刊行された『舟山普陀与東亜海域文化交流』に「日本"九州大邦主"大友氏与舟山島」を中国語で発表することができ、中国での現地調査の成果を含めた中間段階での本研究成果をより幅広い中国人研究者に提供することが可能になった。 第2は、東アジアの日中関係史の一側面として収斂しがちの本研究を、西洋史を含めたよりグローバルな世界史の史的構造のなかに位置づけて研究報告することができたことである。ポルトガルのリスボンで開催された国際研究会において本研究の趣旨と中間成果を英文発表したことで、本研究に対する西洋の研究者から様々な意見や評価を得ることができ、最終年度に向けた今後の研究集約の方向性を明確化することができた。 第3は、豊後の古代からの要港である佐賀関について、その機能や空間構造を明らかにすることができたことである。佐賀関は、古代の海部の系譜をひく豊後水道の伝統的な港町である。リアス海岸の天然の入り江には、中世には戦国大名大友氏の水軍衆に編成された海民たちが生業を営んでおり、漁労や船を使った物資の輸送活動を行いながら、家臣として大名に奉公する武士たちの存在が複数の史料から確認できた。その成果は、港湾空間高度化環境研究センターHPを利用して一般公開している。
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