本研究の目的は、これまでほとんど研究の対象になってこなかったラオス・ランサン王国期の地方文書(じかたもんじょ)および地方行政に関連した物品(印章、文書筒等)を探索・収集するとともに、古老らが語る村の歴史、土地の伝承、昔話等を採録し、それらをデジタル化資料として保存することで、内外の研究者のみならずラオス国民の利用に供し、ラオス前近代史研究の新たな展開に寄与することにある。現地調査は、年2~3回程度、北部のフアパン県もしくは南部のサワンナケート県において実施している。 本研究は、ラオスにおいてランサン王国期の地方文書を本格的に調査する初めてのプロジェクトであり、年代記を始めとする編纂史料に依拠した旧来の歴史研究から同時代史料を活用した新しい歴史研究への転換を企図している。さらに、ラオス国立大学の教員や学生および県情報文化局職員らに協力者として参加してもらうとともに、村人たちにも単なるインフォーマント(情報提供者)としてではなく、自分たちの村の歴史を掘り起こす調査者として活動に加わってもらうことで、ラオス地方史研究に対するラオス人自身の関心を呼び起こし、全国的な地方文書およびオーラル・ヒストリー収集プロジェクト立ち上げに向けて機運を高めていくことを目指している。
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