昨年度に引き続きアムール川下流域の多層位遺跡であるマラヤ・ガバニ遺跡の発掘調査をロシア側の共同研究者とともに夏季8月に実施した。昨年度の発掘区に隣接する地点に発掘区を二カ所設定し調査することにより、変遷過程の実態をより明らかにすることに努めた。発掘調査では最上層から鉄器時代の遺物が出土したが、主体となる層ではアムール川下流域の新石器時代を代表する三つの文化、コンドン、マルイシェヴォ、ヴォズネセノブ文化の遺物、遺物を検出し、それらの間の相対的な序列を今回もほぼ確定することができた。またそれぞれ各文化期の細別を考えるための良好な資料を得ることができた。また、これらのアムール川下流域に典型的な土器群の他に、シベリア尖底土器系のベリカチ文化はこのアムール川の最下流地域の新石器文化の中ではマルイシェヴォ文化との関係が深いことが確かめられたが、両者の具体的な関係はまだ分析を必要としている。 これらの発掘した調査資料は日本に持ち帰ることはできないため、今回も冬季の12月にハバロフスクの博物館を訪れて、夏季発掘資料の整理作業をロシア側共同研究者とともに実施した。出土した土器の図面作成、拓本作成、写真撮影を行った。また、出土した石器についても図面作成、写真撮影を行った。また、この間にロシア側共同研究者と夏奉の調査成果について討議を行った。昨年度及び今年夏季の発掘調の際に現地で作成した図面や撮影した写真の整理を国内で実施した。これに併行して、国内では周辺地域との比較研究を推進するため資料収集をおこなった。
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