(1)アムール川下流域は極東平底土器の一角を占めており重要な地域であるが、いまだ研究の遅れた地域でもある。日本の縄文時代に対応するアムール川下流域の新石器時代はその最も基本となる編年すら不明確である。そのため、当該地域の新石器時代から初期金属器時代にかけての編年を確立する。明らかにする点は、アムール川下流域の新石器時代から初期金属器時代における食料採集民の生業活動と集落形態の変遷である。 (2)北日本とアムール川下流域との関わりを明らかにする。北海道東部の縄文時代早期やサハリン南部の新石器時代には、石刃鏃文化と呼ばれる、大陸との関連が考えられている段階がある。ところが、それに対応と考えられているものは、アムール川中流域や沿海州の新石器時代遺物群であり、もっとも肝心のアムール川下流域の対応する段階は分かっていない。これを明らかにする。 (3)アムール川下流域にはときにシベリア地域のより北方の文化が波及することが知られている。アムール川下流域は、極東地域と東シベリア地域の接点であり、東シベリア系の文化がアムール川下流域でどのような動きをしたのかを、具体的な発掘資料をもとに把握する。 この三つが本研究課題の大きな柱である。
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