研究目的-申請時の目的と研究の進捗状況- 我々は日本列島の後期旧石器時代の出自がどこにあるかという追求の過程で、その比較資料を大陸に求める段階に至っていると考えた。本研究計画では、モンゴルの中期・後期旧石器時代遺跡の発掘調査を通してその地域の後期旧石器時代成立に関わる資料の蓄積を第一段階とし、次いでその成果をロシア・アルタイ地方の成果と合わせて北アジア全体を俯瞰することを第二段階としている。そして最終的にはその成果を日本列島における当該期の調査・研究・議論に利用しようとするものである。 この計画を実施するために、より日本列島に近いモンゴル東部を調査地として選び、試掘と分布調査を繰り返した。しかし中期旧石器・後期旧石器文化層の良好な堆積状態を示す遺跡を探すことができなかった。そのため、2009年度は調査地をモンゴル中部のセレンゲ川流域に移して遺跡の分布調査を実施するとともに、すでに当地域で発掘調査を実施しているロシア・アメリカ・フランス各調査隊の調査地を巡検しその遺物の出土層準の確認を行い、ほぼ3万年前のC14年代を持つ層準から、人の歯、ダチョウの卵の殻を用いたビーズなどとともに、中期旧石器時代につながるルバロワ技法に関連する石器類が発見されていることを確認した。同時にすでに調査を終了しているアメリカ隊の調査地「バヤン遺跡」の簡単な試掘を実施し、我々自身の手でもルバロワ技法に関する剥片を複数確認した。 この年代と遺物の内容はまさに中期旧石器時代から後期旧石器時代への過渡期に相当するものであり、我々が探し求めていたそのものである。3年目にして、ようやく目的の遺跡に到達したことになる。 また、現地における分布調査、試掘調査とは別個に、当研究の前半の成果のまとめを行っているが、2007・2008年の成果の図化が終了し、今年度7月中に刊行の予定となっている。
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