研究課題
本研究の主眼であるテル・タバン遺跡の発掘調査を8月初旬から9月末まで実施した。1.テルの北側に東西24m、南北20mのトレンチを設定し発掘を行った。調査の結果、壁の厚さが約2mから7mを測る中期アッシリア時代の巨大日乾煉瓦造の公的建物跡を検出した。建物跡は5つの時期に大別され、これらの中で注目すべきは、最初の建物跡から検出した南北4m、東西3m以上の焼成煉瓦敷きの部屋である。この煉瓦敷きに使用されたと思われる煉瓦には“天候神献呈碑文"が刻まれており、初期に在位した王が創建した神殿・宮殿等の公的機能を有した建物跡であったことが明らかになった。このトレンチでは中期アッシリア時代の連続した層序を認め、タバンの歴代王が構築した建造物の特定や土器編年を確立するうえで非常に有効な資料を得ることができた。2.前年度発掘した西側地区のトレンチの継続発掘調査を行った。最大の発見は、中期アッシリア時代の医術・呪術を記した粘土板文書が出土したことである。この結果、この粘土板文書が出土した地点の近くに、宗教・文学文書等を集めた文書庫(図書館)が存在する可能性が非常に強くなった。今後の調査で、こうした文書庫が発見された場合は、これまでのタバン調査では最大の発見になるのは確実である。来年度の調査は、このトレンチを更に拡張し文書庫の発見を目指す。3.今回の調査では46点の中期アッシリア時代の楔形文字資料を採集した。その内訳は粘土板文書1点、テラコッタ1点、円筒形碑文2点、土器片1点、土製鋲片6点、煉瓦片25点で、これらの解読を文献班の山田、柴田が現地で行った。なお、山田、柴田は7月にドイツで開催された国際アッシリア学会で、これまでのタバン調査で出土した文字資料の報告を行い欧米研究者達から注目を浴びた。
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オリエント 51-1
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第16回西アジア発掘調査報告会報告集
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セム系部族社会の形成研究集会報告集-シリア・メソポタミア世界の文化接触 : 民俗・文化・言語-
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Excavations at Tell Taban, Hassake, Syria : Preliminary Report on the 2007 Season of Excavations, and the study of cuneiform Texts
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