研究課題
本研究はシリア、テル・タバン遺跡の歴史考古学的調査を主眼にしており、今年度も同遺跡の発掘調査を8月初旬から9月末まで実施した。遺跡の西側地区、北側地区、南西地区で発掘を行った。最も注目すべき成果は、北側地区の中期アッシリア(前13~11世紀)の巨大日乾煉瓦造建物跡の壁内から、王名入り煉瓦が積まれた状態で発見されたことである。これまでの調査では文字入り煉瓦の使用目的が判然としなかったが、建物の定礎記念として使用されたことがほぼ確実になった。南側地区ではタバン調査では初の前期ミタンニ時代から古バビロニア時代(前16~19世紀)にかけての連続した層序を確認した。同層序は古バビロニア時代と中期アッシリア時代の間の空白を埋める生活層で、北西メソポタミアの拠点都市タバトゥムからタベトゥ(共にタバンの古代名)への変遷過程の究明や同時代の土器編年を確立するうえで極めて重要である。現地宿舎では2005年冬に出土した未整理の中期アッシリア粘土板文書群の保存修復作業を行った。保存修復は2名の日本人保存修復専門家(西村明子・佐藤由季:研究協力者)により行われ、約200点の粘土板文書の保存処理を完遂した。邦人の手による粘土板文書の保存修復は、これが最初で将来の日本の保存修復技術の発展に向けての貢献が期待される。文献班の山田重郎、柴田大輔(共に研究連携者)は、今回の調査で出土した楔形文字資料(円筒形碑文片、文字入り煉瓦)と保存修復が完了した粘土板文書の解読を行った。両氏は今年度もタバン出土の古バビロニア粘土板文書の共同研究をフランス人研究者と行い、その研究成果が欧米学会で高く評価された。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (9件)
第18回西アジア発掘調査報告会報告集
ページ: 87-93
Organisation, Representation and Symbols of Power in the Ancient Near East
巻: (印刷中)
Apres l'Empire : Crise de l'Etat et de la Monarchie en Mesopotamie du Nord et en Anatolie (XIII^<eme>-X^<eme> siecle av.J.C.)
Studia Chaburensia
巻: 1 ページ: 217-239