研究概要 |
本年度は,これまでのパンタナール研究でまだ調査が行われていない南パンタナールのネグロ川上流域を事例に,湿地生態系の環境動態や,近年の急速な経済開発が本地域の自然・社会環境に及ぼすさまざまな影響について実地調査を行った。研究対象地域のネグロ川上流域は,マットグロッソドスル州の州都であるカンポグランデや,アキダウアーナといった諸都市に近接しており,湿地生態系に対する人為的ストレスがとりわけ強い地域である。具体的な調査内容と成果は,以下の通りである。 1.マットグロッソドスル州におけるパンタナール研究のメッカであった,UNIDERP大学の研究施設としてネグロ川上流域に設置されたPausada Araraunaを拠点に,多様なビオトープの分布状況やそれらの形成要因について調査した。本地域には,とくにムルンドゥ(murumdu)と呼ばれるアリ塚に起因して形成されたと考えられる円形状の土地の高まり(vegetated earthmounds)が数多く分布することがわかった。 2.UNIDERPやマットグロッソドスル州連邦大学(UFMS)などの大学研究機関,EMBRAPAなどの政府機関,コンサベーション・インターナショナル(Conservation International)といった環境保護団体などが,これまでに本地域で実施してきた調査・研究プロジェクトやその成果について調査を行った。南パンタナールでは,1998年以降,生物多様性の把握とその保護を目的とする湿地生態系のアセスメントプロジェクト(RAP : Programa de Avaliacao Rapida)などが展開されてきた。 3.都市からの近接性の良さから,本地域には多数の農場民宿が立地し,さまざまなエコツーリズム用のプログラムを提供している。知名度の高まりとともに,日本など海外からもガイドをともない観光客が訪問している。
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