研究概要 |
パンタナールは,世界最大級の熱帯低層湿原である。研究対象地域であるブラジル・パンタナールでは,とりわけ1990年代以降,深刻な環境破壊やさまざまな経済・社会問題が顕在化している。その背景には,地域住民が長く培ってきた伝統的な湿地管理システムを軽視し,外部社会の近代的価値観や経済・社会システムを,性急かつ無批判に導入してきたことがあると考えられる。 本研究は,地域住民が世代を越えて継承してきた熱帯湿原の伝統的なワイズユース(wise use,賢明な利用)を,具体的な地域に即して多角的に発掘し,それらを科学的に再評価する作業を通じて,持続可能な環境資源利用や包括的な環境保全の方策を,現在の経済・社会システムの中に再構築することを目的としている。また,その地域住民への還元を通じて,パンタナールの内発的発展を推進する一助となることを企図している。
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