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2009 年度 実績報告書

フィリピン農漁民の資源利用と世帯戦略から見た貧困削減の可能性の研究

研究課題

研究課題/領域番号 19401039
研究機関埼玉大学

研究代表者

三浦 敦  埼玉大学, 教養学部, 教授 (60261872)

研究分担者 小林 孝広  早稲田大学, 人間科学学術院, 客員講師 (50386653)
キーワード生計戦略 / 交渉 / 協同組合 / インド的権力観念 / 占有 / フィリピン / プルードン
研究概要

本研究の目的は、フィリピンの農漁民の生計戦略を、その資源利用のあり方に即して分析することを通じて、貧困削減の可能性について検討し、そこにおける地域の社会関係の役割をすることにあった。この目的に向かって、現地調査を毎年実施した他、文献調査を行った。その結果、農民も漁民も生計戦略においてリスク分散という課題がとても重要である一方で、その対象資源に関わらず、日常生活におけるお互いの交渉や戦略が重要であることが明らかになった。また、こうした戦略や戦略の背後にある人間関係の認識は、実は植民地化以前からのフィリピン(ビサヤ)、さらには東南アジア海域世界の人々の社会関係や慣習法のあり方に由来するものであり、その根底には「インド的権力観念」があることがわかった。日常生活の戦略はこうした権力観念を背景にして初めて理解できるものであり、貧困削減の手段とされている協同組合の実質的な機能も、こうしたこの土地の人々の歴史に根ざす社会関係の把握無しには理解できない。この歴史に由来するシステムは、一定の社会関係の内部で財を自由に循環させることにより日常生活のリスクを分散しているが、現代的経済システムは逆に生活のリスクを先鋭化させ、貧困と経済格差を固定化させている。そこで、貧困問題にアプローチするためには、植民地化以前の社会の経済システムを理解した上で、占有に基づき財の循環を促すような社会システムを強化する必要があることが示された。実のところ、こうした経済システムは実はフランスの社会主義思想家プルードンが唱えたものにとても類似しており、そこから、ゲゼルの地域通貨の思想のフィリピンにおける可能性についても新たな展望を開く可能性を示すことができた。以上の問題は、今までは歴史学や経済学で個々別々に論じられてきたものであるが、本研究ではそれらに調査を通じて全体としての見通しを与えた点に学問的意義がある。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2009 2008

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 地方の居住問題にみる憐れみのディスカルテ2009

    • 著者名/発表者名
      小林孝広
    • 雑誌名

      生活学論叢 15

      ページ: 42-55

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 構造調整プログラムの社会的側面:フィリピンとセネガルの比較2009

    • 著者名/発表者名
      三浦敦
    • 雑誌名

      埼玉大学教養学部紀要 45

      ページ: 167-191

  • [学会発表] Economie sociale et developpement rural : developpement cooperatif aux Philippines dans la perspective proudhonienne2008

    • 著者名/発表者名
      Atsushi Miura
    • 学会等名
      2e Colloque international du Programme de Recherche d'Interet Regional Vente Directe Bretagne-Japon 《L'agriculture participative : pourquoi, comment, jusqu'ou?》
    • 発表場所
      レンヌ第二大学(フランス)
    • 年月日
      2008-11-06
  • [学会発表] 宅地の確保・維持にみる「小さな人々」の生活戦略:フィリピン・ビサヤ地方・イビサン町における居住問題とディスカルテ2008

    • 著者名/発表者名
      小林孝広
    • 学会等名
      第13回フィリピン研究会全国フォーラム
    • 発表場所
      立命館大学
    • 年月日
      2008-07-06

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公開日: 2011-06-16   更新日: 2014-06-10  

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