真鍋は、経済的指標としてプーノ地域におけるラクダ科動物の価格の変化を、公文書や組合の内部資料から分析してきたが、獣毛の国際取引の増加に伴い、飼育される畜群の種類が画一化する傾向にあることを突き止めた。藤井は、コトシュの「交叉する手」の神殿の発見後、その遺物が日本人によって盗み出されたという噂を分析し、その背景に、発掘後のずさんな遺跡管理に問題があったことを聞き取り調査から明らかにした。高橋は、大洪水のためクスコでの調査が困難となったため、インカをめぐって歴史的にはクスコと対立関係にあるカハマルカ地域でのインディヘニスモの実態を調査し、当該地域では、スペイン化が進んでいること、インディヘニスモの核となるような先住民文化は、民衆劇のようなものではなく、考古学遺跡に求められる傾向にあることを解明した。友枝は体調を崩し、後に逝去した。その代わり、現地の研究者J.ソラーノとM.ミリョネスが、中央ペルーでのテロリズムの影響と、その後の地域の再生の調査を受け継いだ。その結果、テロの終息とともに村落の再興が開始されたが、およそ10年間続いた政治暴力を避けて都市に出ていた人々の思考はチョロ化し、リーダーシップの在り方に大きな変化が見られることが分かった。それに関連し、M.ソラーノはテロの犠牲者の鎮魂の事例を詳細に調べ、それが葬送儀礼一般にも変化をもたらしたことを明らかにした。加藤は、J.ソラーノとともにマンタロ谷で道路網の整備が、換金作物の生産、観光用民芸品生産にどのような変化を与えたかを調査し、道路網のみならず、道路周辺の環境が社会変化を大きく規定することを究明した。また宅配便の分析も行い、それが、都市におけるマンタロ地域の文化の維持に大きく寄与していることを明らかにした。カプソリは昨年度発見した1920年代のプレ・インディヘニスモの文書の解析を行い、アンデス山間地の社会文化の地域偏差を抽出する道筋を切り拓いた。M.カルデロンは、1950年代から今日に至るまで、地域の篤い信仰を集める民衆聖人への奉納品を年代順に画像化し、それを通時的に研究する体制を整えた。加藤は上記の調査・研究を統括した。
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